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『102』冷戦終結と日本   河東丈二

  • nakata513
  • 2022年4月5日
  • 読了時間: 2分

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1990年、東西ドイツが統一します。そして、湾岸戦争が起こるわけですが、実は冷戦の崩壊によってアメリカは、軍事技術であったインターネットを民間に開放します。つまり、「もうソ連は消えてしまった。圧勝した。軍縮も進んでいるので、もう軍事技術をそんなに守らなくていいから、民間でがんがん使えるようにしたらどうだ」というわけです。


 実は、アメリカは製造業の国でした。そのアメリカという父親のすねをかじり尽くして大きくなった国が日本です。鉄鋼、繊維、自動車、半導体……。全部、アメリカのすねをかじり尽くして、アメリカの産業に打撃を与えて大きくなってきたのです。


 世界の歴史を見ていると、たとえ同盟国であっても自国の産業を食いつぶす相手は、ボコボコにしています。ところが日米関係だけが歴史の例外で、アメリカは日本を“ボコ”ぐらいしか殴らなかったのです。町の中で日本製の自動車をハンマーで壊すといった程度です。何でボコボコにされなかったかというと、冷戦のおかげです。


 日本地図を見れば、ソ連や中国が太平洋に出るのに日本列島がいかに邪魔をしているかが分かります。まさに日本は“不沈空母”としてめちゃ価値があったのです。だから、アメリカは日本を“ボコ”ぐらいに殴るだけで甘やかしてくれたので、日本は強くなれたのです。


 製造業であまりに強くなったので、日本には“物づくり神話”が生まれました。日本は物づくりの国だという、根拠も何もない神話がまん延して、新しい産業を生み出す発想が生まれなかったのです。だから冷戦が終わったことで一番ダメージを受けたのは、恐らく日本です。


 冷戦構造があったからこそ、アメリカは日本を大事にしてくれました。でも冷戦が終わったら、日本の不沈空母としての価値はなくなり、しかも新しい技術は民間に開放されて、日本はキャッチアップできなかったわけですから。実は日本の停滞や没落は、冷戦から始まっている気がします。

 
 
 

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